鼠牙彫根付

江戸時代・18世紀
長径3.6
線刻銘「蘭亭」
東京国立博物館
郷誠之助氏寄贈

江戸の根付師の中でも人気の高い「蘭亭」の銘が刻まれた根付。
塊感のある形状からは実用的な根付としても使えそうではあるが、画像からは実用に供された跡は見られない。
「蘭亭」より少し後の世代である「懐玉齋正次」の作と言われてもうなずけそうな作りである。
毛彫は細かく、繊細。写実的でありながら少し愛嬌のあるポーズも正次的。
「蘭亭」は人気が高いだけに、後の世の贋作や後付銘も多いと聞く。
「蘭亭」は寛政期の人(18世紀後半)であると伝えられている。
寛政期の根付師の作がこの保存状態で残っているのであれば驚異的であるといえるが・・・?
ちなみに、上田令吉「根附の研究」によると「蘭亭」は、

長井と稱し出雲より出で京都に住す、性豪放なりしも彫刻の技最も巧妙を極め名工と稱せらる、動物、花鳥、風景等の根付を作りしが人物を最も得意とす、主として牙材を用ひしが嘗て仁和寺の宮より命ぜられて胡桃に山猿千疋を彫刻せしに精巧にして肉眼を以て識別すること能はざりしと、遂に法橋に叙せらめ、寛政年中の人なり(彫銘、蘭亭)。

むろん本作、「蘭亭」の銘がなくても素晴らしい細密彫刻であることは間違いない。

出典:国立博物館所蔵品統合検索システム